- 2011/02/01(火)
- 農業経営者を目指す人たちへ―久野農園・久野裕一さん―
埼玉県比企郡で完全無農薬の有機野菜の生産、販売を行なっている「久野農園」の経営者、園主久野裕一さん。
「農業は理念や夢を持ちやすい分野。自分の思いでやるのは自由なんです。」と農業の魅力を語る久野さんに農業を始めるにあたっての心構えや経営していく上で大切なこと等について語っていただきました!
【久野さんプロフィール】
東京生まれ。
東京の大学在学中に日本各地の有機農家や海外の農家を視察研修し、大学卒業後、1年間埼玉県比企郡小川町の田下農場にて農業生産を学ぶ。
1997年
沖縄本島の西30kmに浮かぶ人口700名あまりの離島、渡嘉敷島に単身移住。自然卵養鶏および有機野菜の生産を主な事業とする久野農園を開業。
2005年
農産物、および加工品のインターネット販売に力を入れる。
2006年
渡嘉敷村の観光関連業者数社と連携し、島の活性化プロジェクトの一貫として、ポータルサイト『とかしき丸ごと喰いに来い』を立ち上げる。
2007年
農園を埼玉県に移し、農園を拡大中。社員の独立支援にも力を入れている。
現在、久野農園を経営する傍ら、農業経営改善、新規就農等に関するセミナー、講演会の講師を務めている。
■「自分が農業をやりたいから」では経営は成り立たない!
小さいころから農業にあこがれ、日本各地の農家を訪ね、大学時代にはアジアやオーストラリアの農家を訪ねたこともあったそうです。
その後、埼玉県比企郡小川町の田下農場で1年間住み込み実習をし、1997年に農家になりました。
久野さんが新規就農をスタートするのに選んだ土地は沖縄県渡嘉敷島。
沖縄にあこがれがあったからという理由でした。
「渡嘉敷島で栽培から販売まで行っていたんですが、難しかったですね。渡嘉敷島では島の殆どの人が自給自足の生活だったんです。」
「農業を始めるにあたってはただ作るだけではダメ。どう作ってどう売るか。始める前にそこを考えることをしなかったんです。」
沖縄で無農薬栽培農家として悪戦苦闘しながら経験、実感したことは現在の久野さんにとってのまさに原点となるものでした。
■「野菜を作れば売れる」と思っていないか?
「農業をやるならばどこからどうやって収入を得るか、というところまで考える必要があります。新規で就農する人は、自給自足的な考えで始める人が多いんです。作ってからどう売るかを考える。それではうまくいかないんです。」
「一般の工業製品ならどのような販路で収入を得るか、商品ができる前に確定しておかなければならなりません。そしてどんな状況下にあっても契約を守る、というのは一般企業なら当たり前のことですよね。
農業でも同じ考えでやらないとうまくいきません。
台風とか気候とか外的要因に大きく左右される商売ですが、自分自身をしっかり管理し、そういうものを乗り越えてようやく収入が得られるようになるんです。」
それでは、販路をしっかり確保して、契約を守れたら商品は売れ続けるのでしょうか??
■「なぜお客さんは自分の野菜を買ってくれるのか?」
「有機野菜だから」という答えはNG。
「その答えだけでは売上も自分自身の成長も止まってしまいます。作り方によって同じ有機野菜でも全然違うものができます。消費者がどんなものを求めている か?なぜ買ってくれるのか?そういうことを考えながら自分らしい物を作る、自分らしい働き方をする、それを実現していかなければなりません。」
農業の経験がない人もこれまでの経験を活かした「自分らしい物」を作ることができるそうです。
「例えばプログラマーをやっていたからこそできる農業ってなんだっけ?と問いかける。工夫すれば山ほどいろんな可能性が見えてきますよ。」
それが売れ続けるためのポイントなんですね。久野さんは従業員に常日頃から「なぜ自分が作ったルッコラを買ってもらえるの?」と問いかけているそうです。 でもその答えは簡単に見つかるものではありません。その答えを見つけるために日常的に考えることが大切なのではないでしょうか。
「農業は技術が身につき、結果が出せるようになるまでに時間がかかる産業です。まずは5年10年の資金は用意しておかなければなりません。お金も時間もかかるという覚悟が必要です。
経営者となるには金融的な知識は不可欠です。自分の作ったどれくらいの量のものがいくらで売れるか、勘だけではなくデータで管理しなければなりませんね。また、そのデータをどこからどうやってとっていくかも考える必要があります。」
野菜をただ作るだけではない、「考える農業、売れる農業」は奥が深く、その分やりがいと満足感を高めてくれるものだと思います。楽しそうに生き生きと話して下さる久野さんの表情を見てそう感じました。
久野さんは今後も積極的に新規就農を目指す人に向けて講演をされる予定だそうです。
あなたも久野さんのように自分の理念をしっかりと持った農業経営をしてみませんか?